シンプルに

自分の作った句でまともだなーと思うものをあげてみる。

 

ツバメおり陽がしずむ幣舞橋や

桜の下ちょこんとオオイヌノフグリ

すみれ咲く疎水のコンクリートの隙

 

あるシンプルな発見がある。

これらの句は、風景のなかに、あるそれを受信する何かを、置いている。

ツバメ、オオイヌノフグリ、すみれ。

モノとモノとの関係が書かれている。

すると、焦点が、しっかり合う。

「風景と私」しか関係がない、つまり、ざっくりと風景しか書いていない句は、いまいち、掴みどころがない。例えば。

 

花を待つ雨を聴きつつ夏想う

桜から灰降る街を酔い歩き

北向きの窓に漏れ入る春の日よ

 

透き通っている、と見ることもできるが、やっぱり、ぼんやりと、情緒しか浮かんでこない。

掴みどころがない、というのは、先の日記に書いた、身体がない、ということだ。

 

今日は蕪村の句集を持ってきたのでよいと思ったものを適当に抜書きしてみよう。

 

 

鶯や茨くぐりて高う飛ぶ

梅ちりてさびしく成しやなぎ哉

薬盗む女やは有おぼろ月

蛇を追う鱒のおもひや春の水

春雨やいさよふ月の海半(なかば)

日は日くれよ夜は夜明ヶよ啼蛙

居りたる舟を上がればすみれ哉

つつじ野やあらぬ所に麦畠

旅人の鼻まだ寒し初ざくら

鶯のたまたま啼や花の山

菜の花や鯨もよらず海暮ぬ

しのゝめや雲見えなくに蓼の雨

窓の燈の梢にのぼる若葉哉

三井寺や日は午にせまる若楓

鮒ずしや彦根が城に雲かゝる

路たえて香にせまり咲いばらかな

さみだれや大河を前に家二軒

葉がくれの枕さがせよ瓜ばたけ

白蓮を切らんとぞおもふ僧のさま

河童(かわたろ)の恋する宿や夏の月

秋たつや何におどろく陰陽師

名月や夜は人住ぬ峰の茶屋

綿つみやたばこの花を見て休む

秋の暮辻の地蔵に油さす

秋雨や水底の草を踏わたる

角文字のいざ月もよし牛祭

笛の音に波もより来る須磨の秋

長き夜や通夜の連歌のこぼれ月

小鼠のちゝよと啼や夜半の秋

たんぽゝのわすれ花あり路の霜

らうそくの涙氷るや夜の鶴

こがらしや岩に裂行水の声

初雪の底を叩けば竹の月

水仙や寒き都のこゝかしこ

葱買て枯木の中を帰りけり

皿を踏鼠の音のさむさ哉

冬こだち月に隣をわすれたり

宿かせと刀投出す雪吹哉

我を厭ふ隣家寒夜に鍋を鳴らす

古池に草履沈みてみぞれ哉

寒月や門なき寺の天高し

鯨売市に刀を鼓(なら)しけり

うぐひすの啼や師走の羅生門

としひとつ積るや雪の小町寺

ゆく年の瀬田を廻るや金飛脚

 

 

春をしむ人や榎にかくれけり

歩きあるき物おもふ春のゆくへかな

野路の梅白くも赤くもあらぬ哉

おぼろ月大河をのぼる御舟(ぎょしう)かな

一羽来て寝る鳥は何梅の月

飛魚となる子育るつばめかな

朧月蛙に濁る水やそら

なの花や昼一しきり海の音

さくら一木春に背けるけはひかな

鶯に終日遠し畑の人

みの虫の古巣に添ふて梅二輪

月おぼろ高野の坊の夜食時

やぶ入りの宿は狂女の隣かな

池と川とひとつになりぬ春の雨

月に遠くおぼゆる藤の色香哉

春雨の中を流るゝ大河かな

春雨や蛙の腹はまだぬれず

春風に阿闍梨の笠の匂かな

昼舟に狂女のせたり春の水

風吹ぬ夜はもの凄き柳かな

短夜の夜の間に咲るぼたん哉

賊舟をよせぬ御舟や夏の月

動く葉もなくておそろし夏木立

やどり木の目を覚したる若葉かな

浅間山けぶりの中の若葉かな

さみだれや名もなき川のおそろしき

飯盗む狐追うつ麦の秋

牡丹有寺ゆき過しうらみ哉

雲の峰に肘する酒呑童子かな

いな妻や秋つしまねのかゝり舟

錦する野にことこととかゞしかな

戸をたゝく狸と秋をおしみけり

足あとのなき田わびしや落し水

看病の耳に更ゆくおどりかな

故さとの坐頭に逢ふや角力取

おもひ出て酢つくる僧よ秋の風

いな妻や佐渡なつかしき舟便り

盗人の首領歌よむけふの月

地下りに暮行野辺の薄かな

巫女(かんなぎ)に狐恋する夜寒かな

鹿鳴くや宵の雨暁の月

卯の花の夕べにも似よしかの声

うつくしや野分の後のとうがらし

鱸釣て後めたさよ浪の月

秋の空きのふや鶴を放ちたる

追風に薄刈とる翁かな

笠とれて面目なきかゞしかな

女郎花二もと折ぬ今朝の秋

秋風にちるや卒塔婆の鉋屑

蓼の穂を真壺に蔵(かく)す法師かな

後の月鴫たつあとの水の中

病起て鬼をむちうつ今朝の秋

常燈の油尊き夜長かな

秋の夜や古き書読む南良法師

洟たれて独碁をうつ夜寒かな

水仙に狐あそぶや宵月夜

終に夜を家路に帰る鉢たゝき

糞ひとつ鼠のこぼすふすま哉

水鳥やてうちんひとつ城を出る

寒月に木を割る寺の男かな

海のなき京おそろしや鰒汁

初しもや煩ふ鶴を遠く見る

闇の夜に終る暦の表紙かな

屋根ふきの落葉を踏や閨のうえへ

雪沓をはかんとすれば鼠ゆく

念ごろな飛脚過ぎゆく深雪かな

目前をむかしに見する時雨哉

生海鼠にも鍼こゝろむる書生哉

凩や広野にどうと吹起る

三日月も罠にかゝりて枯野哉

闇の夜に頭巾を落すうき身哉

寒月や門をたゝけば沓の音

子を寝せて出て行く闇や鉢たゝき

貧乏な儒者訪ひ来ぬる冬至哉

其むかし鎌倉の海に鰒やなき

白炭の骨にひゞくや後夜の鐘

住吉の雪にぬかづく遊女かな

水鳥や巨椋の船に木綿売

大仏や傘ほどの手向菊

山畑やけぶりのうへのそば畠