出発

2012年11月19日、ヒゲはワタシを出発した。

ワタシを離れたヒゲはまず北へ向かった。

初めてのひとり旅だった。行く先は決まっていない。

とりあえず北へ。海へ出た。漁港だった。

フェリーが出ていた。とりあえず北へ。

ヒゲは足を止めた。国外便も出ている。乗った。

船に揺られてヒゲは国境を越えた。海はゆらゆら。

これからどうしたものか。ヒゲは考える。カモメが飛ぶ。

水面を見るとタチウオがおどっている。日の光にきらり。

ヒゲは酒を飲んだ。酔った。眠くなった。とりあえず陸に着いてから考えよう。

午後の日差しがまぶしかった。ヒゲはうつらうつら気を失った。

 

目を覚ますとひやりと冷たい空気を肌に感じた。

日が暮れていた。船はボーーーと音を立てた。

光りの列が見える。陸だ。どすくろい影が近づいてくる。

嗅いだことのない匂いがやってきてヒゲはくらくらした。

ボーーーー。船はまた叫ぶ。ヒゲはぼんやり。現実感がなかった。

これが外国か。ここはどこだ。ぼんやり。ぼんやり。

大きく揺れた。どうやら着いたらしい。出口へ並ぶ列ができた。ヒゲも並んだ。

船を降りた。地面があった。どれくらい船に乗っていたのかわからない。

まだ少し眠い気がした。

船を降りた列はどんどん夜に消えていく。

ヒゲはすこし焦った。まわりを見るとそこには見たこともない文字が並んでいた。